『 あと ひとつ寝ると 』
ぺリリ。
フランソワーズは リビングの壁に掛かっている日めくりカレンダーを
一枚 はぎ取った。
31日 黒い字 である。
「 ふん。 燃えないゴミも燃えるゴミも。 粗大ゴミも。資源ゴミも!
もうと・・・っくに最終収集 終わっちゃったけど。 」
きゅ。 エプロンのヒモを結びなおし 腕捲りをした。
「 最後の そして 本気の大掃除 よ! 各個人の部屋は − 自己責任。
とにかく 共有部分を綺麗にします ! 」
彼女は ずんずん窓辺に近寄り がらり、と窓を開けた。
「 ? なんなんだよ〜〜 寒いぜ〜〜〜 」
「 ぶるるる ・・・ なんだ 窓を開けたのか?
ヒーターが落ちたのかと思ったぞ 」
「 ・・・ 閉めろ。 」
リビングでソファやらヒーター付近の床やらで
ごろごろしているオトコ達から たちまちのブーイングだ。
寡黙な連中は 軽い非難の眼差しをむけてきた。
「 空気の交換です! さあ 皆! お正月の準備よ! 」
え ・・・・ !
一瞬にして 【 めんどくさ 】 の文字で リビングはいっぱいになった。
「 俺〜〜 またタケとかとりに行くのかあ? ・・・ さむ 」
「 あ 吾輩はこれから飯店の手伝いに 」
「 ・・・ さむ〜〜 ちょっともう少し着込んでくるよ〜〜
え ジェロニモは? あ〜〜 温室かなあ ちょっと見て 」
「 あら 大人は 」
「 朝一で 店! かきいれ時だもの 」
「 ああ そうね。 それじゃ 皆さん! 」
コソコソ ・・・っと フェイド・アウトしようとしていた仲間も
しっかりと呼びとめた。
「 まず この部屋を整頓します。 それからお正月の準備。 」
「 掃除なら るんば に任せようぜ ! 」
「 あ そうだよね〜〜 ここの るんば は改良型だもの
スイッチを入れて放っておけば ― たちまちぴかぴかだよ 」
「 な〜〜〜 」
若年組 はどうしても掃除から逃れたい魂胆なのだ。
「 ふん。 いくら改良型でもね こんなに障害物が多かったら
働けません! まず 片してください。
雑誌、新聞はきちんと整え ラックに!
カップやグラスは キッチンへ。 きちんと洗う!
灰皿は 撤去。 スモーキング・ルームは 外です。 」
ぶう ぶう〜〜〜〜 一斉にブーイングが飛ぶ。
「 静粛に願います。 そしてその後 お正月の準備 を開始します。 」
「 ふん ま〜た飽きずに アレを飾るのか?? あのでっかい
あ〜〜〜 竹を使ったオブジェ・・・ 」
「 け。 や〜っぱオレ また 竹の当番かよ〜〜 」
「 ふん。 真ん中スカスカのお前にぴったりじゃねえか 」
「 な なんだとぉ!? オッサン、 おめ〜は
なんも役に立たねえじゃんかよっ 」
「 もう一回 言ってみろ ・・・ ! 」
ま〜〜たいつもの痴話ケンカかよ〜〜 と 周囲はうんざり顔だ。
「 揉め事は イヤよ! 」
この邸を仕切る、女主人の 鶴の一言 である。
「 も もめてなんか いね〜ぜ 」
「 ふん。からっぽアタマにも解るのか 」
「 んだとぉ〜〜 」
「 ― いい加減にして。 」
ズン・・・っと腹の底に響く声が飛んできた。
「 え あ あ ああ もちろん 」
「 ふ ん 」
どうも彼らは 彼女には敵わないのだ。
フランソワーズは 鉄壁に理論武装?してたたみかけてくるわけでもなく
ましてや 威嚇的な調子で声を上げることなど 全くない。
・・・ のであるが。
「 ・・・・ 」
彼女に真正面から見つめられ発言されると ― 誰も反対できない。
理屈屋のピュンマや 理論派のアルベルト、そして
やたら弁のたつグレートですら 黙って彼女に従ってしまう。
なんでなのかなあ ・・・?
わからん。 不可知だ。
・・・ ジョーが気の毒だな
彼らはぶつくさ ・・・言いつつも彼らの紅一点の指示通りに
動くのだ。
― 最強の戦士は フランソワーズ だ。
ジョー以外のメンバーは もうとっくにこの真実を身をもって
理解していた。
― さて ギルモア邸のリビングでは・・・
「 わかってるわよね?? ケンカは ナシ! 」
さらに ダメ押しが続く。
「 では ― 気持ちよく新しい年を迎えるために
手分けして 掃除・片づけ をします。 」
え・・・ げ★ だは ちぇ ・・・
リビングに屯するオトコ共の間から 声にならない声?が
もわもわ〜〜〜ん と立ち昇った。
「 あ いいね! ぼく 外周りの掃除 やるね! 」
カーペットに直接座り ソファに寄りかかっていた茶髪少年が
ひとり、明るい声を上げた。
・・・ オマエ なあ ・・・
彼と彼女以外全員の 声にならない声 が巻き上がったのであるが
そんな微妙〜〜な雰囲気などに気づくはずもなく ―
「 任せて! 庭とあと・・・ガレージも掃除するよ。
その後でさあ 門の前に門松 たてようよ? 」
「 まあ ありがとう ジョー。 かどまつ・・・? 」
「 ウン ほら ・・・ 竹と松で作るヤツ。
日本のお正月には必須のオブジェだもん。 」
「 ああ あれね! 去年 揉めたアレ・・・ 」
「 そうだったっけ? うん 今年はさ 商店街にね〜〜
いろんな正月用の飾り、売ってるとこがあるんだ。
そこで 相談してくる。 」
「 きゃあ 頼もしいのね〜〜〜 ジョーってば 」
「 えへへ・・・ 正月は任せて。 あ お節料理はさ
張大人のお店に頼もうよ 」
「 素敵! ジョー お願いできる? 」
「 了解〜〜 じゃ ぼく 掃除開始しま〜〜す 」
「 お願いします 」
彼は さっとダウンジャケットを羽織ると 上機嫌で
庭に出て行った。
へ。 変わったヤツ ・・・
オメデタイ日本人だ ・・・
・・・ おお ボーイ、恋のなせるわざ か
仲間達は こっそりため息を吐きつつ彼の後ろ姿を眺めていた。
「 さ。 それじゃ ウチの中、皆で手分けしましょ。
掃除機で掃除 床磨き 窓拭き そして バス・トイレ。
あと 余裕があれば ドルフィン号の格納庫。 」
「 俺、裏庭の温室、引き受ける 」
意外にも ジェロニモ Jr.が最初に口を開き、
普段と変わらぬ足取りで 部屋から出て行った。
「 お願いします。 あとは 〜〜 」
「 んじゃ オレ、 窓拭くぜ。 」
赤毛ののっぽが立ち上がる。
「 ・・・ 飛ばない? 」
「 う ・・・ 」
「 いくら辺鄙な土地でもね 他人様に見られたら困るのよ? 」
「 ・・・ぐ ・・・ 」
「 ちゃんと地道に窓を拭く。 いい? 飛行厳禁! 」
「 〜〜ったよ ち。 こまこまうっせ〜な〜 」
「 え なあに? 」
「 なんでもね〜〜よ〜〜っ ! 窓 拭くぜ ! 」
彼は バケツと窓拭き用洗剤をひっつかみがしがし出て行った。
「 ― おい 雑巾 ! 」
ひゅん ・・ !
投げられた雑巾は わさわさの赤毛にうまくひっかかった。
「 ― 水回り 引き受ける。 以後1時間 トイレ使用禁止だ。
今のうちにすませとけ 」
「 あらあ〜〜 ありがと アルベルト。 貴方 とても緻密で
丁寧だから助かるわあ〜〜 きっと ぴかぴかね 」
「 ふん。 バス・ルームの天井の黴 ずっと気になってたんだ。
かび・き○〜 あるか。 」
「 あります。 スプレーの替えもあるわ。 」
「 よし。 」
独逸人は 静かに立ち上がり静かに出ていった。
「 うひゃ ・・・ 静かなること林のごとし か 」
「 なに それ 」
「 いや なに・・ ヤツは武将みたいな所があるな
さて 吾輩は ― 地味に床磨き、とゆくか 」
「 ありがとう! あ モップに変身しないでね?
普通に ごく平凡に 手と足を使ってね 」
「 へいへい ・・・ マドモアゼルの仰せ通りに 」
名優は 大仰にお辞儀をして退場した。
「 え〜っと ・・・ ピュンマ ? 」
「 ・・・ う〜ん この動きが問題だな。
ふうん ・・・ そうか もう少し細かくターンすればいいんだ!
よし! モーターの回転数を 」
彼はフランソワーズの言葉など まるで耳に入っていない・・らしい。
改良型・るんば の側にしゃがみ込み熱心に観察している。
「 あ の〜。 もしもし? 」
「 そうか。 あまり早い動きでもマズイんだな ふうん・・・ 」
「 ピュンマ ・・・? 」
「 ・・・ え? ああ フランソワーズ、なんだい 」
「 研究中失礼します、 話かけても いい 」
「 あ〜 いいけど・・・ ちょっと待ってくれるかな。
この 改良型・るんば のプログラムの変更をおもいついたんだ!
ねえ 聞いてくれるかい? 」
「 え ええ ・・・? 」
「 まずね モーターの回転数をαとして 障害物の大きさをβとするだろ?
現在の掃除指数を nとしてた時、 数式は 」
「 あ いいわ、わかったから。 改良を進めて?
そして どんどん試運転 してください 」
「 サンキュ〜〜 うん この数式にマチガイがなければ ・・・・
リビングの完全清掃にかかる時間は 」
ピュンマはもうしっかり自分自身の世界に没入していた。
「 ま ・・・ いいわ。 リビングがキレイになれば 」
フランソワーズは そっと彼とるんばの傍を離れた。
るんば と 強力タグを組んで頑張ってね・・・
「 え〜と? あ 博士! 博士〜〜〜
」
フランソワーズはギルモア博士の書斎に飛んでいった。
博士の書斎は 一階の南側、日当たりのいい場所である。
とんとん とん ・・・・ !
彼女は控えめにノックをする。
「 博士? お邪魔します あのう〜 お掃除なんですけど 」
「 おう そっちももう終わったかい 」
「 ・・・え? 」
ガチャ。 ドアが開いて ジャージ姿で雑巾を手にした博士が現れた。
「 あと窓を拭いて終わりなんじゃが ・・・・ 遅れをとったかの? 」
「 博士! お掃除 もう終了ですか?? 」
「 あ? ああ ・・・ 昨日の燃えるゴミ収集最終日に
ごそ・・・っと出してな〜〜 納戸に詰まっていたガラクタも
一緒に出しておいたぞ 」
「 え!! そうなんですか?? ありがとうございます〜〜
ゴミ出し 間に合わなかった〜〜って思ってました 」
「 結構 いろいろたまっておったよ。
時にリビングの掃除はもうお終いかい 」
「 ・・ 今さっき始めたばかりなんです。 」
「 そりゃ・・・ ああ あの改良型・るんば に任せれば 」
「 ソレ・・・ ピュンマがさらに調整してて・・・ 」
「 ピュンマが?・・・ 大丈夫かの? 水中用なんぞに改造せんか 」
「 さ さあ・・・? 」
「 プログラムの書き換えはアイツには朝メシ前じゃからなあ 」
「 す 水中用にしちゃったら困りますう〜 」
「 研究好きなヤツじゃからなあ ・・・
あ そうだ! 窓なんじゃが さっきジェットが外壁に沿って飛んでおったぞ 」
「 え!? 」
「 バケツと雑巾を持っておったから 二階の窓や天窓の掃除に 」
「 !!! ダメだって言ったのに〜〜〜 もう〜
ジェットぉ〜〜〜〜 」
フランソワーズは ぷんすか・・・外に飛んで行ってしまった。
「 賑やかじゃなあ ・・・ ま ウチのゴミは専用処理炉で
コンパクトサイズになるから なんとなかるか。
さて こっちもあと一息〜〜 」
博士は 腕まくりをし 窓辺に張り付いた。
「 ジェットは? 」
フランソワーズは庭に駆けだしていた。
「 フラン? なに。 」
落ち葉かきをしていたジョーが 驚いて振り向いた。
「 ジョー。 ジェット 見た? 」
「 あ? さあ ・・・ ぼく ずっと地面みてたから
気が付かなかった 」
「 ああ そうよねえ・・・ 」
「 彼がどうしたんだい 」
「 ・・・ 飛んでるの! 」
「 飛ぶ? 」
「 そ! 窓 拭くのに! 誰かに見られたらどうするつもり? 」
「 あ ・・・ あ〜 あ! 新型のどろ〜んです って言えば? 」
「 ドローン ?? 」
「 そ! 人型ドローン 開発中! ってことで 」
「 ・・・・ 」
ジョーは一人 にこにこしている。
・・・ おめでたい のね ジョー・・・
ま そこが彼のイイトコ なんだけど・・・
フランソワーズは こそ・・・っとため息を吐いた。
誰かになにか言われたら
ジョーに言い訳 してもらおっと!
「 それよりさ、落ち葉を片づけたら ぼくの担当は終わりなんだ。
まだどこか掃除するとこ、ある? 」
「 えっと・・・ だいたい終わりかしらね 」
「 そっか〜〜 フランって掃除好きなの? 」
「 え? 」
「 あ〜・・・ あの さ。 だってすごく張り切っていたから 」
ジョーは 少し躊躇いがちに言って 落ち葉を丁寧に集めた。
大きめのゴミ箱は 色とりどり落ち葉でいっぱいになった。
「 あら 綺麗ねえ〜〜 」
「 ふふ・・・ 落ち葉のクッションになりそう?
あ・・・あとで 焼き芋 しよっか 」
「 やきいも?? 」
「 そ。 落ち葉で焚火して その中に芋、いれるんだ。 」
「 え 燃やすの? 」
「 ウン。 本当はヤバいんだけど・・・
ウチの裏庭でやればわかんないよ 多分。 焼き芋、美味いぜえ〜 」
「 え ・・・ そ そう?? やりたい・・・! 」
「 お〜し やっちゃう!
あ 掃除がちゃんと終わってから やるから。
フラン、掃除好きなんだよね ? 」
「 べつにそんな好きじゃないけど・・・
でも 大掃除がね 新年を迎える最高の準備だと思うの。 」
「 そっか〜〜 ・・・ そうだよねえ
だから大掃除とかするんだよなあ 」
「 わたしもそう思うわ。 」
「 ウン あ やっぱさ〜門松とか 欲しいなあ 」
「 そう? 」
「 ウン。 日本人の拘りかなあ 」
「 じゃあ 買ってきましょうか。 駅の向うの大型ショッピング・モール
なら売ってるかも 」
「 あ〜 あの さ。 今日は大晦日だろ。午前中に通ったら
もう売ってなかったんだ ・・・ 」
「 え 売り切れってこと? 」
「 あ そうじゃなくて ― 一夜飾りは縁起が悪いんだって。 」
「 いちやかざり?? えんぎ ってなあに。 」
「 あ〜〜 あの 明日は新年だろ?
新年を迎えるためのものは余裕を持って飾れってことらしいよ? 」
「 ふうん ・・・ 日本にはいろいろ興味深い風習があるのねえ 」
「 う〜ん ぼくもあんまし詳しくないんだけど さ。 」
「 そう? それならどうするの、 えっと・・・門松? 」
「 今年は諦めるよ また来年・・・ 」
ジョーは 最後の落ち葉を塵取りに集めた。
「 でも ・・・ 飾りましょうよ〜
それが日本のお正月の習慣なのでしょう? 」
「 そうなんだけど さ 」
ジェロニモ Jr. が ゆっくりと裏庭から回っきた。
「 あら ジェロニモ。 温室の掃除、 終わった? 」
「 うむ。 イチゴがたくさん採れた。 」
「 まあ 嬉しい! 」
「 門松 だが 」
「 え? 」
「 ― 裏山で材料 さがす。 そして 俺、作る。
ジョー 一緒に手伝ってくれ 」
「 え!! ジェロニモ 〜〜 ありがと! 」
「 フランソワーズ。 片づけたらジョーと裏山に行ってくる。 」
「 わあ よかったわね〜〜 ジョー !
お願いね、素敵な 門松つくって。
ふふふ〜〜 ヴォリューム・ランチ を用意しておくわ! 」
「 わお〜〜 頼むねえ 」
「 サンドイッチとお握り でいい? 」
「 最高! それじゃ 行ってきます〜〜 」
「 うむ。 ノコギリと植木鋏 もってゆく。 」
二人は 嬉々として裏山に入っていった。
やがてお日様が 真上に輝く頃 ―
「 お昼ごはんよぉ〜〜〜〜〜 みんなぁ〜〜 手を洗って〜〜 」
フランソワーズの声が邸中に響いた。
「 お! メシ〜〜〜〜〜 メシ〜〜 」
ガラン ガラン ・・・ バケツと一緒に赤毛が飛び降りてきた。
「 ! 乱暴なヤツだな! 」
「 ふん なにも壊しゃしね〜や 」
「 そういう問題ではない。 粗暴なヤツめ 」
アルベルトは 洗い終わった雑巾を丁寧に乾していたが思い切り顔を顰めた。
「 結果お〜らいだ! めし〜〜〜〜 めし! 」
「 手 洗う! 」
「 ・・・へい。 」
女主人の一言で 空飛ぶ赤毛は大人しくバス・ルームに向かった。
「 おい! 掃除仕上げたばかりなんだっ
きちんと使え! 余計なトコロを汚したら ―
もう一回 掃除してもらうぞ
」
アルベルトは 裏庭から声を張り上げる。
「 あれ〜〜 もうお昼かあ〜〜 」
「 うむ 」
「 お? ・・・ なんだ〜〜 オマエら! 」
振り向けば ― 泥だの枯葉だのに盛大に?まみれた二人が立っていた。
「 えへへ 〜〜 裏山でさ〜〜 門松の材料 調達してきたんだ。
ほら 見て 見て〜〜
」
「 枝ぶりのいいもの、あった。 ここの裏山は素晴らしい。」
「 ね! ほら 松でしょ こっちは竹。 藁縄はね〜
下の商店街の植木屋さんで わけてもらったんだ 」
ジョーとジェロニモ は 上機嫌である。
「 これで! 門松 作るよ! いいなあ〜 」
「 うむ。 いいのが作れる。 」
「 そうだね! まず 竹を揃えてっと・・・ 」
ジョーは抱えてきた < 収穫 > を 裏庭で開陳し始めた。
「 ジョー? ジェロニモも・・・ 手を洗ってきて お昼よ 」
キッチンを確かめてきた彼女の声が呼ぶ。
「 わお 昼飯! わあ〜い じゃあ バスルームで手を 」
「 ちょいと待った!! 」
泥だらけで勝手口から上がろうとした二人を アルベルトはあわてて
引き留めた。
「 お前ら ・・・ ここで待ってろ。 」
「 へ なんで? 」
「 ここで 手と顔 洗え。 着替えもしろ。 」
「 え ・・ ここで? 寒いよぉ〜〜 」
「 湯、もってきてやる。 心配するな ホースで水をぶっかけたりはせん 」
「 ・・・ 本当〜〜?? 」
「 この寒空でそんなこと するか!
ともかく ぴかぴかに磨きあげた浴室を どろどろにするな〜〜 」
「 はあ 」
「 ジョー、 ジェロニモ〜 お湯よ 」
どすん ちゃぷん。
バケツを二個 お湯を満載してジェットがもってきた。
「 〜〜〜 おっもて〜〜〜〜 ! 」
「 きっと泥だらけだろうと思って。 バケツ 用意しておいたの。
さあ ジェットも! 三人とも ここで手と顔 洗って! 」
「「「 へ〜〜い 」」」
ジャブ じゃぶ ちゃぷん ・・・
「 え へ ・・・ 気持ちいいね〜 」
「 うっひゃあ〜 」
「 ・・・湯、冷えたら庭にまく。 」
「 そうだね〜 うん・・・? いい匂いが 」
くんくん ・・・ジョーは鼻を鳴らした。
「 なんだあ? お。うまそ〜な匂いじゃんか 」
ジェットもきょろきょろしている。
「 なにか焼いている。 焚火 か・・・? 」
「 さあ・・・? あ ・・・ 」
ほわほわ ・・・ どたどた ・・・
食欲をそそる香と共に にこにこ顔がやってきた。
「 お〜〜い いい按配に焼けたぞ 」
「 え なに? わ いい匂い〜〜〜〜 」
「 ほれ 熱々じゃ 」
博士とグレートが ホイルに包んだ塊を幾つももってきた。
「 え!! もしかして〜〜 焼き芋? 」
「 ご名答! 焼きたて ほっくほく。 庭に落ち葉で
念入りい焼いたぞ 」
「 ・・・ マズいんじゃないですか 焚火って。 」
「 マドモアゼル。 ご心配は御無用ですぞ?
我らには このギルモア博士がついているではないか〜〜 」
「 はっは・・・ 以前の焼却炉をちょいと改造してなあ
ダイオキシンも煙もでず それでいて 芋はふっくら・・・
という新型にしたのじゃよ。
」
「 わあ〜〜 すごいなあ〜〜 この香・・・最高!
えへへ・・・ お昼に食べようよ 」
「 そうね そうね ほかほかのうちに ・・・・
あ 三人とも手、洗った? あら 博士、グレートも
手が真っ黒よ? ここで洗ってくださいな 」
「 おう 忝い〜〜 」
「 ああ 温かいなあ 」
ザァ −−−−
使用済みの湯が冷えると ジェロニモ Jr.が裏庭に撒いた。
カチャ カチャ コトコト トポポポ ・・・
サンドイッチにお握り、チキンにサラダ、そして 焼き芋!
全員集合のランチは 大賑わいとなった。
自家製・ほくほく焼き芋も大評判。
食べて 笑って 喋って ― 皆 満ち足りた気分でコーヒーを啜る。
「 あ〜〜 マドモアゼル。 正月の料理 ・・・ なんと言ったかな
アレはどうする 」
「 お節料理 でしょ。 ちゃんと大人にお願いしてあります。 」
「 わお〜〜 あ 中華風? 」
「 いろいろ、ですって。
あ ジョーの好きな 伊達巻 と 二色たまご は特注してあるわ 」
「 わい〜〜〜 あ 栗きんとん も! 」
「 それはわたしがどうしても食べたくてお願いしました♪ 」
「 げ。 中華と和食かよ〜〜 」
「 大丈夫。 ロースト・ビーフ も フライド・チキン も
入ってるそうよ 」
「 よっしゃあ〜〜♪ 」
「 ビールはあるだろうな 」
「 酒類は ワシが注文したよ。 ウィスキー、ビール、日本酒。
ワインに紹興酒、ブランディ もあるぞ。 」
「 さすが博士。 ご相伴いたします。 」
オトナ組は に〜〜んまり だ。
昼食後は ―
「 さあて っと。 ぼく、ジェロニモ Jr.と門松、
作ってくるね 」
「 むう。 俺達のオリジナルだ。 」
「 ね〜〜 」
二人は嬉々として 寒風の中に出ていった。
「 うふ 張り切っているわね〜〜
さあ 皆さま? 大掃除の仕上げ お願いします。
そして 気持ちよ〜〜く新しい年を迎えましょ
」
「 オレ! 屋根の掃除、してくるぜ 」
「 ― 飛ぶな。 地道に梯子をかけて登れ いいな! 」
「 わ〜った わ〜った コマコマうっせ〜よ〜〜 」
赤毛ののっぽは ぷい、と外に出ていった。
「 ・・・ ま 多少は目を瞑りましょ。 掃除するっていうのだから 」
「 ふん ! 」
「 ね ・・・ お正月って皆が楽しめればいいのよねえ?
せっかく一緒に過ごすのですもの。 」
「 そうさなあ。 マドモアゼルの意見の一票! 」
「 あは 僕も。 そうだよねえ 」
なんとか・かんとか 大掃除を済ませ、裏山から調達した松と竹で
門松を作り、お節料理も 皆の好きなメニュウの盛り合わせ。
「 わあ〜〜 今晩 食べたいなあ〜 」
「 な ちょこっと味見〜〜 」
「 ダメです! 元旦に皆で、よ 」
「 ぶ〜〜〜〜 」
ふふふ ・・・ これがウチのお正月 かもね
フランソワーズは ほっこり、自然に笑顔になっていた。
「 さあ 明日の朝は 皆で初日の出、見に行きましょ ! 」
ご〜〜〜ん ・・・ 除夜の鐘が響き始めるのも もうすぐだろう。
************************** Fin. ************************
Last updated : 12,31,2019.
index
************ ひと言 **********
原作・あのお話 の 裏返し?
仲良しバージョン です♪
ちょうど大晦日にアップでしたので
こんなお話になりました。
・・・ あ イワン 出すの 忘れたァ〜〜